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LIM-010:白霧に覆われた回廊
記録番号:LIM-010記録日時:2017年4月14日(午前2時19分頃)調査担当:境界現象研究班 第一分隊 観測記録 調査地点は人工構造物と思われる長い直線状の通路内で確認された。内部は白色の壁面と ...
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記録番号: OBS-010
目撃者: 被験者M.S.(仮名)
収集方法: 聴取による証言
証言内容

通路を歩いていたはずなのに、急に白い霧が流れ込んできて……。
気づけば足元も見えないくらい濃くて、先に進むことも戻ることもできなくなっていました。
霧の中には光がありました。丸い光が、ふたつ、みっつ……。遠くに見えるのに、瞬きをするたびに近づいてくるような。
それでいて、どんなに手を伸ばしても触れられないんです。
不思議なのは、霧に包まれているのに呼吸が苦しくなかったことです。むしろ静かで、妙に落ち着くくらいで……。
でも同時に、誰かに見つめられている感覚が強くなっていきました。
一度だけ、霧の奥で影を見たんです。人の形に見えたのに、動いているのか止まっているのかもわからない。ただ、確かにこちらを見ていました。
その瞬間、後ろから「戻れない」という声が聞こえて……。
振り返ったはずなのに、そこにはもう出口はありませんでした。
霧の光がひとつずつ消えていく中で、最後に残ったのは自分の足音だけ。
……でも、その足音は、僕が立ち止まってもまだ続いていたんです。