OBS-014：天空回廊と「SEE YOU TER」

気がついたら、真っ白な廊下に立っていました。
左に白い柱が延々と続いていて、果てが見えません。
床の一部はガラスみたいに透けていて、その下には一面の雲が広がっていました。
見下ろすと足がすくんで、吸い込まれそうでした。

廊下の壁際には、自動販売機が置かれていました。
普通の飲み物が並んでいるように見えたけれど、お金を入れようとしても反応しません。
無音のまま、ただそこに立っているだけでした。

さらに進むと、水色のプールのような場所に出ました。
そこには白い標識が立っていて、黒い字で 「SEE YOU TER」 と書かれていました。
文字が途中で途切れているみたいで……「SEE YOU LATER」と言いたかったのかもしれません。
でも、不完全なその言葉が、妙に怖く感じました。

周囲には風の音も、人の気配もなく、ただ水面に光が揺れていました。
けれど、その揺れの奥から「またね」と誰かが囁いた気がしたんです。

私は慌ててその場を離れました。
あのまま耳を傾けていたら、本当に雲の中へ落ちていったような気がします。

今でも、自販機の無機質な姿と「SEE YOU TER」の標識が夢に出てきます。
どちらも「戻れない」という合図みたいで。