-
-
LIM-012:室内プールと歩行者信号機の記録
記録番号:LIM-012記録日時:2009年5月17日(午後4時頃)調査担当:境界現象研究班 第一小隊 観測記録調査対象は、一般的な住宅のリビングに酷似した空間で発見された。部屋は白い壁とカーペットに ...
続きを見る
記録番号: OBS-012
目撃者: 被験者T.M.(仮名)
収集方法: 聴取による証言
証言内容

家の中にいるはずなのに、どういうわけかリビングの中央にプールがありました。
水は青く澄んでいて、まるで屋外のプールそのままを切り取って置いたみたいに。
けれど、周囲は普通のカーペット敷きの床で、ソファや壁も見慣れた住宅そのものなんです。
まるで現実がねじれたようで、すぐに違和感を覚えました。
さらに奇妙だったのは、プールの横に立っている歩行者用の信号機でした。
道路の角で見かけるのと全く同じ形で、コードも電源も見えないのに青信号が点灯しているんです。
しかも、青い光はプールの水面に反射して、部屋全体に淡く揺れる影を作っていました。
私は立ち止まりました。信号機がこちらに「進め」と命じているように感じたんです。
けれど、どこへ? プールの中へ?
そのとき、妙に耳が静かすぎることに気づきました。外の音も、時計の音も、自分の呼吸すら遠ざかっていくような感覚。
部屋全体が、青い光に支配されていくようでした。
次に気がついたとき、私はもうその場所にはいませんでした。
でも、今でも頭のどこかであの信号が青く点滅しているのを感じます。
「進め」と、まだ命じられているように。