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LIM-011:天空庭園の閉鎖区画
記録番号:LIM-011記録日時:2013年8月7日(午後4時32分頃)調査担当:境界現象研究班 第二分隊 観測記録 調査地点は四方を白壁で囲まれた矩形の中庭状空間。壁面には多数のガラス扉が等間隔に配 ...
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記録番号: OBS-057
目撃者: 被験者K.R.(仮名)
収集方法: 聴取による証言
証言内容

気がついたら、四方を白い壁に囲まれた庭に立っていました。
空は晴れていて雲も流れていたんですけど……どこか作りものみたいで、本当の空とは違う気がしました。
だって、視線を上げても風を感じないし、鳥の声も聞こえないんです。
庭の真ん中には丸いプールがありました。水は透き通っていて綺麗なのに、不思議と波紋ひとつ立たない。
覗き込むと、底があるのかどうか分からなくて、ただ青い穴が広がっているように見えました。
周囲の壁にはたくさんの扉が並んでいました。どれも同じ形で、同じガラス窓付きの扉。
開けようとしたんですが、どの扉も冷たくて硬くて、全く動かないんです。
少し離れたところに、左右対称に小さな木が二本生えていました。だけど……根が土に繋がっている感じがなくて、まるで芝生の上に置かれているだけの模型みたいでした。
一番怖かったのは、ここにいると時間の感覚がなくなっていくこと。
日も暮れないし、音も変わらない。ずっと同じ景色のままなんです。
そして、ふと気づいたんです。プールの水面に映っている空の雲が、上に見える空と動き方が違うことに……。
まるで二つの「空」があるみたいに。
そのとき、自分がどちらの空の下に立っているのか分からなくなりました。