LIM-016:天井水槽型アトリウム構造

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LIM-016:天井水槽型アトリウム構造

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記録番号:LIM-016
記録日時:2013年4月12日(午後6時頃)
調査担当:境界現象研究班 第一小隊

LIM-016:天井水槽型アトリウム構造

 

観測記録

見上げると、水があった。

円環状のアトリウムだった。四層以上の吹き抜け構造で、各階に半円形の回廊が続いていた。ガラスの手すり越しに、上も下も見渡せた。

天井の中央に、巨大な水槽があった。楕円形で、内部に水が満たされていた。水面はゆっくりと揺れていた。支柱がなかった。接合部も確認できなかった。何も支えていないのに、そこにあった。

各階の回廊には白いカーテンがかかった部屋が並んでいた。中は見えなかった。吹き抜けの縁には植物が帯状に植えられていた。最下層は芝生だった。天井の水槽から差し込む青緑の光が、芝の上に落ちていた。

静かだった。人の痕跡は何もなかった。


分析

居心地が悪い理由を言語化するのに、少し時間がかかった。

空間そのものは美しかった。植物があって、光があって、芝生があった。でもずっと上が気になった。天井の水槽が、視界の端に常にあった。見上げるたびに、水面が揺れていた。

あれが落ちたら、全層が一瞬で水没する。構造的にそうなっている。芝生も、植物も、回廊も、全部。それがわかった瞬間から、穏やかに見える空間がそう見えなくなった。

円環状の構造は、上下の感覚を少しずつ狂わせる。どの階にいるのかわからなくなる。どこが安全でどこが危険なのか、判断がつかなくなる。


結語

最下層の芝生に立っていると、落ち着く。光があって、緑があって、地面がある。

でも真上に水がある。支えのない水が、ゆっくり揺れている。

崩れる気配はなかった。崩れそうな音もしなかった。だからこそ、ずっと気になった。いつ崩れてもおかしくないものが、何事もなく存在し続けている。その静けさが、一番怖かった。

調査員のひとりが「ここは綺麗だから長くいたくなる、でも長くいるほど天井が気になって眠れなくなる」と書き残している。よくわかる。美しい場所だった。だから早めに出た。

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