記録番号:LIM-014
記録日時:2013年4月3日(午前10時頃)
調査担当:境界現象研究班 第一小隊

観測記録
白い柱が並ぶ回廊だった。長くて、まっすぐで、終わりが見えなかった。
床の一部がプールになっていた。水色で、透明で、水面の下に雲が見えた。下方に雲海が広がっていて、そのまま繋がっているように見えた。空の上にいるような感覚だった。ただし、外に出る方法はなかった。
プールの先に標識が立っていた。白い標識に、黒い文字で「SEE YOU TER」と書いてあった。触ろうとしたら、指が通り抜けた。金属に見えたのに、質量がなかった。霧に触れているような感じだった。
壁際に自販機があった。中に飲み物が見えた。硬貨を入れようとしたら、入らなかった。画面に触れても反応しなかった。存在しているのに、使えなかった。
分析
「SEE YOU LATER」の、LATEが抜けている。後で、という部分が消えている。いつ会えるかわからない別れの言葉から、いつかという約束だけが削れた形だ。
偶然かもしれない。でも調査員の全員が、あの文字を見て「戻れない気がした」と言っている。
プールにカメラを沈めた。即座にホワイトアウトした。機器がシャットダウンした。雲の下に何があるのかは、まだわかっていない。
結語
自販機は使えない。標識には触れない。プールの底は見えない。
形だけがある。機能しないものが、整然と並んでいる。
「SEE YOU TER」の前に立つと、見送られている気がした、という証言がある。誰に、どこへ、見送られているのかはわからない。標識は答えない。ただ、LATEが欠けたまま、ずっとそこに立っている。
回廊の先がどこに繋がっているのか、まだ誰も確認していない。確認しに行った調査員が、戻ってきていないからだ。
記録番号: OBS-014目撃者: 被験者M.N.(仮名)収集方法: 聴取による証言 証言内容 続きを見る
OBS-014:天空回廊と「SEE YOU TER」