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LIM-015:芝生の参道と「See you later」の壁面文字
記録番号:LIM-015記録日時:2013年4月7日(正午)調査担当:境界現象研究班 第二小隊 観測記録調査対象は、一面の芝生に覆われた長大な直線状の通路である。通路の両脇には同一形状の白いプラスチッ ...
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記録番号: OBS-015
目撃者: 被験者K.R.(仮名)
収集方法: 聴取による証言
証言内容

目を開けると、私は緑の芝生の上に立っていました。
そこはまるで参道のようにまっすぐで、両脇には白いプラスチックの椅子が延々と並んでいました。
誰も座っていないのに、その整然とした配置だけで「式典の会場」のように思えました。
芝生の先には水色のプールが広がっていて、その奥の白い壁には大きく
「See you later」 と書かれていました。
文字を見た瞬間、心臓を掴まれるような感覚がして……「また会える」という意味なのに、
どうしてか永遠の別れのように聞こえたんです。
周囲には白い柱が規則正しく立ち並んでいて、静かに空へ伸びていました。
見上げれば青空が広がっているのに、風の音も鳥の声も一切なく、
ただ水面のきらめきだけが時を刻んでいました。
気づけば、どこかから視線を感じました。
誰も座っていない椅子の列から、「見送られている」気がしたんです。
その場に長く留まってはいけないと直感しました。
でも背を向けると、まるで「もう帰れない」と言われたようで、
足が震えてしばらく動けませんでした。
今もあの光景を思い出すと、胸の奥に重たいものが残ります。
「See you later」という言葉が、帰還不能の合図のように思えてならないんです。