記録番号:LIM-001
記録日時:不明(推定:午前4時頃)
調査担当:境界現象研究班 第一小隊

観測記録
白いタイルの回廊だった。床まで水に満たされているはずなのに、足元には草が生えていた。
天井は完全に水没している。液面は微かに揺れていて、光を乱反射させていた。それ自体は、まだ説明がつく。問題は床だ。水の底に、草原がある。小さな花まで咲いていた。水没環境でどうしてそうなるのか、誰も説明できなかった。
奥行きは一定に見えた。でも、歩いても歩いても、同じ花畑が繰り返し現れたと複数の調査員が証言している。距離の感覚が、どこかで壊れているらしい。水面の下には、布のようなものがゆっくりと漂っていた。全員が目撃したが、記録映像には何も残っていない。
分析
矛盾だらけの環境だ。水没しながら花が咲いている。そのくせ、体験した調査員の全員が「懐かしい匂いがした」と言う。草花の種類は既存の分類に当てはまらないにもかかわらず、だ。
「半夢境型境界空間」という仮定が出ている。正直なところ、他に言葉が見つからなかった。水のサンプルを採取しようとしたが、容器に入れた瞬間に消えた。再現はできていない。
結語
「水没」と「開花」は、普通は同時に起きない。なのにここでは両方がある。そして、長くいると気分が変になる。郷愁、と言えば聞こえはいいが、調査員への精神的な影響は否定できない。安全確認は、まだできていない。
記録番号:OBS-001目撃者:仮称「N」収集方法:口述証言(録音より書き起こし) 証言内容 続きを見る
OBS-001:水底の花畑に関する証言